
ストレスや自己免疫が
関与する
脱毛症
頭皮に10円玉程の脱毛部分ができる症状です。
自己免疫疾患といわれており、免疫細胞の乱れが、毛包を破壊するような方向に進んでいる状態です。単発のものは比較的治癒率が高いですが、多発するもの、全体に広がるものは難治性です。
大学病院の専門外来を行ってきた経験からいくつかのアドバイス、治療法をご提案できます。病状にお困りでしたら、一度ご相談ください。
原因と発症のメカニズム

円形脱毛症の原因は、現段階で解明されていません。ただし、近年の研究により、自己免疫学的機序が関与するのではないかと考えられるようになりました。
ウイルスなど外部からの異物・侵入物を攻撃して、身体を守る機能が免疫反応ですが、自己免疫疾患を抱えると、本来は攻撃する必要のない箇所に対して、免疫反応が働きます。円形脱毛症は、リンパ球が毛根を異物と錯覚して攻撃することにより、毛根に炎症を引き起こして、髪を抜け落ちさせる病気と考えられているのです。
元気な髪の一部が突然抜け落ちてしまうことが、円形脱毛症の特徴ですが、なぜそのような問題が起こるのかは明らかになっていません。遺伝的な要因とする説や、ストレスが関与するとする説もあり、原因の解明が進められている最中です。
家族に円形脱毛症の人がいると、自身も発症しやすく、これが遺伝との関連が深いと言われる理由になっています。また、アトピー性皮膚炎に罹患している人に、円形脱毛症の患者が多いとの報告もあります。自己免疫反応を起こすきっかけとして考えられるのは、ストレスなど精神に由来する問題や、感染症、疲労といった肉体的な要因です。
そのため、寝不足や妊娠・出産、病気・ケガなどとの関連性も疑われますが、ストレスを感じにくい乳児や幼児も円形脱毛症を発症します。そのため、円形脱毛症になる直接的な要因ははっきりしません。
治療方法について
ステロイド
湿疹などの治療に用いられるステロイドには、炎症を抑える作用があります。円形脱毛症の方の頭皮は、毛包と呼ばれる毛の根本の部分に炎症細胞が集中しているため、ステロイドを用いた治療が効果的と考えられています。ただし、同じ部位に長期間塗布し続けた場合、皮膚が薄くなったり、毛細血管が拡張されたりといった副作用が表れる場合があるため要注意です。
エキシマレーザー
エキシマレーザーとは、紫外線を照射する光線療法の一種です。光線療法は様々な皮膚疾患に有効で、円形脱毛症にも効果があるとされています。1~2週間に1度の通院が必要ですが、副作用のリスクが低いことがメリットです。
内服薬
ステロイド内服薬には、発毛を促進する効果があることが解明されています。脱毛が広範囲かつ急速に進行している患者さまに対しては、ステロイド内服薬を用いて治療にあたります。ただし、肥満・糖尿病・胃潰瘍・骨粗しょう症・ニキビなど、多くの副作用がある点には注意しなければなりません。特に「パルス療法」では大量のステロイドを点滴するため、副作用をコントロールするために入院が必要です。
診察
診察
診察は視診を中心に行います。脱毛斑の形状や境界、毛髪の状態、家族の罹患歴、ご本人の病歴などを確認します。
治療
大半の円形脱毛症は、適切な治療を施すことにより改善できます。ただし、症状が悪化すると治療の難易度が上がり、回復が遅れる場合があるため、できるだけ早く治療を始めましょう。当院では、日本皮膚科学会による、「円形脱毛症診療ガイドライン」に基づき、根拠のある治療法をご提案します。
・ステロイド
・エキシマレーザー
・内服薬
アフターケア
アフターケアにおいて重要なのは、頭皮の環境を整えて、毛髪の成長を促すことです。洗髪時には刺激が少ないシャンプーを使用し、頭皮マッサージで血行を促進しましょう。栄養バランスの取れた食事と十分な睡眠を心がけ、ストレスを軽減することもポイントです。
生活習慣とケア方法

円形脱毛症の再発を防ぐためには、日常生活におけるケアを続けることも大切です。髪の毛をしっかりと成長させるために、亜鉛などの栄養素をしっかりと摂れるよう、栄養バランスの良い食生活を心がけましょう。睡眠不足や過度なストレスも、脱毛の原因になると考えられるため、睡眠の質を高めることや、ストレスを適度に発散することも重要です。
また、頭皮は過度な刺激を与えないように注意しましょう。洗浄力の強いシャンプーは避け、頭皮に優しい成分だけが配合されたシャンプーを利用することが推奨されます。また、強くブラッシングしたり、爪を立てて洗髪したりすることも避けましょう。
